3.4 傷ついた心とプライド
朝早起きして、勉強したりピアノの練習をしたりしていると妻が起きてきた。
機嫌の良さそうな表情で珍しく「ピアノの成果弾いてみてよ。」と言った。
「上手く弾けないかもよ。」と前置きして、「それでも構わない。」と言うので、「優しい妻だな。」と嬉しくなっね、
「でも、頑張るぞ。俺の心のこもった演奏を良く聞いとけよー!」と思いを込めてピアノを弾いた。
弾き終わったあと、「どんな表情で聞いてくれてたかな。」と期待をこめて妻を見ると、なんと妻は机の上でなんかの整理の作業をしていた。
僕が見つめていることにも気づかない。
あれ、見間違いかな。
瞼をこすっても目の前の絶望的な景色は変わらない。
「あのー、終わったんですけどー。」と申し訳なさそうに妻に話しかけると、
妻ははっとした表情をしていた。
僕は自分の惨めさに耐えられなくなった。
「コーヒー飲む?」と妻に聞き、コーヒーを淹れにいった。心はひどく傷つけられているのに、優しさを発揮してしまう。僕の悪いところだ。
いや、単なる優しさではない。
これは、抵抗なのだ。